追い詰められた側の戦い方~日本の歴史を繰り返すイスラム国~

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(出典:ISIL kills dozens of opponents in Iraq - Al Jazeera English)

7月7日付の朝日新聞によれば、いよいよシリアのイスラム国が崩壊寸前のようです。イスラム国は必死の抵抗を見せています。

 

イラク軍などによる解放作戦が最終局面にあるイラク北部モスルで6日、旧市街の一角に追い詰められた過激派組織「イスラム国」(IS)が、戦闘員の家族とみられる女性と子どもにも攻撃させる戦術に踏み切った。

イラク軍テロ対策部隊のハディ・アスカリ大尉によると、同軍などは現在、旧市街の約100メートル四方にISを追い詰めている。6日中の完全解放を目指したが、同日昼すぎ、カラシニコフ自動小銃AK47」を手にした女性たちが、「人間の盾」にされた住民に紛れて通りに現れ、銃撃を始めた。また、住民の中には自爆ベストを着た10代とみられる少年たちもいた。女性と少年はISの「家族戦闘員」とみられるという。

(一部引用:IS、攻撃に女性や少年動員 イラク軍の楽観ムード一転 (朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース)

 

追い詰められた側が辿る運命はいつも悲惨です。今回は、太平洋戦争(大東亜戦争)での日本と、イスラム国を比較しながらお話をしていきます。

追い詰められていく者

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ガダルカナル島の戦い

太平洋戦争の初期、日本は快進撃を続けていましたが、1942年8月から始まったガダルカナル島の戦いからアメリカ軍は反攻作戦を開始。アメリカ軍はグアム、サイパン硫黄島などを日本軍から奪取し、じわじわ日本を追い詰めていきます。

 

敗戦濃厚の日本は条件付きの降伏を望みますが連合軍の答えは「NO」。日本に残された道は、全面降伏(無条件降伏)か、あるいは国家が滅亡するまで戦う徹底抗戦でした。日本は後者を選びます。この戦いは原爆投下、ソ連の対日参戦が起こるまで続きます。

コバニの戦い

2015年1月26日、コバニ包囲戦で有志連合がイスラム国に勝利します。この戦いは有志連合とイスラム国との戦いのターニングポイントになりました。世界的に注目されていたコバニの攻防で、イスラム国が敗北したことは、イスラム国の士気や、各地の支配に影響を及ぼしたとされています。

 

イスラム国は神が勝利を与えると宣伝していましたが、この戦いに敗北したことによって組織の限界が露呈しました。それまで快進撃を続けていたイスラム国に対し、有志連合による反攻作戦がここから始まりました。

 

当時の日本と同じく、イスラム国に残された道は全面降伏のみ。降伏した場合、イスラム国の指導者、戦闘員は人道に対する罪で処罰されることが明白のため降伏せず徹底抗戦するであろうと考えられています。

窮鼠猫を噛む(きゅうそねこをかむ)

「窮鼠猫を噛む」とは日本の故事で、弱い者でも、人間は追いつめられて逃げ場を失うと、絶体絶命の状況下でも居直って異常な力を出して反撃するので、相手が弱くても、逃げ道のないところに追いこんではいけないという教えです。

徹底抗戦。それは進むも地獄、退くも地獄

徹底抗戦とは降伏を拒否した敗北必須の側が取る作戦方針です。死ぬことが前提となる、このような極限状態では人間は凶器の沙汰と化し、スパイ容疑や逃亡罪と称し住民を処刑し、少年や女性に自爆攻撃を仕掛けさせ、あるいは弾除けとして住民を文字通り「人間の盾」にした戦いが展開されます。

沖縄での例

1945年3月26日、アメリカ軍を主力とする連合軍は沖縄諸島に上陸します。この戦いは6月23日まで約3ヵ月間に渡り行われました。

沖縄の戦いでは日本軍による直接的な住民殺害が数多くありました。具体的には、

久米島守備隊住民虐殺事件(22人死亡)

渡野喜屋事件(35人死亡・15人負傷)

などの事件があります。

 

一般に1000人以上の住民が処刑されたと推定されています。

 

日本兵による住民処刑の動機はスパイ容疑が中心で、他には物資や壕を巡る日本兵と住民の争いで殺害された事例や、地下壕の探知を避けるために泣き声の止まない子供を殺害した事例、アメリカ軍に降伏しようとした住民を殺害した事例などもあります。

 

また、ひめゆり学徒隊鉄血勤皇隊など少年・少女が強制的に戦闘に参加させられました。

イスラム国の例

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(出典:Is World Peace Possible? How We Can Defeat ISIL | Pacifism21.org)

イスラム国による市民への処刑は数多く報告されています。主な処刑動機は敵性市民、逃亡阻止、スパイ容疑などです。

「イスラム国」1日に100人以上を殺害|日テレNEWS24

「逃げようとするとISに処刑される」イラク軍がモスル西部の奪還作戦を開始、35万人の取り残された子供たち

また住民を「人間の盾」にした戦いも展開されています。

「人間の盾」映像で確認 米軍「イスラム国」非難 - 産経ニュース

 

そして冒頭でもお伝えしたように女性や少年が戦闘に駆り出されています。

IS、攻撃に女性や少年動員 イラク軍の楽観ムード一転 (朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース

 

 

戦争の悲しさ

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現在、イスラム国は有志連合軍に対して徹底抗戦をしています。

 

徹底抗戦下では人間は理性を失い、住民はイスラム国によって「戦闘の道具」として利用されています。

 

スパイ容疑で処刑され、弾除けに使われ、脅迫的に武装させられ敵と戦わざるをえなくなる。本来、保護すべき住民が武器を持っている以上、有志連合は彼らを敵とみなし倒さなくてはいけません。なんという悲劇でしょうか。日本の歴史をイスラム国は繰り返しています。

 

住民がこういう末路を辿ることは沖縄の戦いから、とうの昔に人間は学んだはずです。ぼくたち人間が学ぶ歴史とは年号を覚えることではありません。過去の過ちを受け入れ未来の社会へ活かすことです。

 

良い戦争などありません。戦争は全て悪です。話し合いで解決できなかった責任、イスラム国という過激派テロ組織を生んでしまった責任が社会にはあります。

責任を負うべき者

イスラム国誕生に直接的・間接的に関わった国、組織、個人、あるいは今の社会のあり方がイスラム国を生んでしまったのかもしれません。イスラム国を処罰するなら当然、その誕生に関わった者たちも、平和に対する罪(A級戦犯)で罰っせられてしかるべきです。イスラム国がいくら犯罪テロ集団とはいえ、彼らにも人権はあります。有志連合軍による捕虜の虐待や処刑、投降しようとした戦闘員の殺害にも目を向けるべきです。

東京裁判のように勝者は裁かれなくても済むというのは、公平性に欠けます。

 

一刻も早く住民が解放されることをお祈りします。

 

おまけ

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ドイツの軍人、ハンス・フォン・ゼークトは軍人を4つのタイプに分類しました。軍人に限らず会社などの組織に属している人間のタイプ分けだとを考えると、かなりおもしろいモデルだと思います!

あなたはどのタイプ!?

有能な怠け者

前線指揮官に向いている。 理由は主に二通りあり、一つは怠け者であるために部下の力を遺憾なく発揮させるため。そして、どうすれば自分が楽に勝利できるかを考えるためである。」

有能な働き者

「これは参謀に向いている。 理由は、勤勉であるために自ら考え、また実行しようとするので、部下を率いるよりは参謀として司令官を補佐する方がよいからである。また、あらゆる下準備を施すためでもある。」

無能な怠け者

「これは総司令官または連絡将校に向いている、もしくは下級兵士。 理由は自ら考え動こうとしないので参謀の進言や上官の命令どおりに動くためである。」

無能な働き者

「これは処刑するしかない。 理由は働き者ではあるが、無能であるために間違いに気づかず進んで実行していこうとし、さらなる間違いを引き起こすため。」

 

 

国際情勢に興味のある人にこの本をオススメします!

■『戦争論』解釈に一石を投じた話題の入門書!戦略論の古典的名著の誤まった読まれ方を徹底検証!21世紀の国際情勢理解に役立つクラウゼヴィッツの読み方とは!?

 

おしまい。